1000年前、沖で難破した船を助けたことから

農耕がもたらされ、 子孫が栄え、

現在に至るまでいのちをつないできた小さな島がある。


山口県上関町祝島。

瀬戸内海に浮かぶこの島は、台風が直撃することも多く、

岩だらけの土地には確保できる真水も限られ、

人が暮らしやすい環境とは決していえない。

その中で人々は、海からもたらされる豊穣な恵みに支えられ、

岩山を開墾し、暮らしを営んできた。そして互いに助け合い、

分かちあう共同体としての結びつきが育まれた。

人間の営みが自然の循環の一部であることが、祝島でははっきりと見える。

 

「海は私たちのいのち」と島の人は言う。

1982年、島の対岸4kmに原子力発電所の建設計画が持ち上がった。

「海と山さえあれば生きていける。だからわしらの代で海は売れん」

という祝島の人々は、

以来28年間反対を続けている。

 

効率と利益を追い求める社会が生み出した原発。

大きな時間の流れと共にある島の生活。

原発予定地と祝島の集落は、海を挟んで向かい合っている。

 

1000年先の未来が今の暮らしの続きにあると思うとき、

私たちは何を選ぶのか。

いのちをつなぐ暮らし。

祝島にはそのヒントがたくさん詰まっている。 

 

 


2010年/日本/105分