美しさの底にあるもの
祝島のじいちゃん、ばあちゃんたちは知っている。
自分たちが受け継いできた生業が継承されないことを。
そして、これから何十年か先の未来。田んぼや畑が原野に返り、
舟が朽ちて沈んでいく、それが脈々と続いてきた自然の摂理であるということを。
ただ、そうなるのが運命ならば、せめて元通りにして返さなければならない。
そこに原発の存在する余地はない。
これは思想云々ではなく、その土地で生活してきた者の実感だ。
ただ、「原発の問題は人と人とを引き裂く」という言葉にハッとさせられる。
島の中で反対の人間もいれば、賛成の人間もいる。それぞれの考えがある。
原発以上に恐ろしく、悲しいのは人間の関係性なのだ。
だからこそ「いま」を受け入れ、覚悟を決めて生きているじいちゃん、
ばあちゃんたちの笑顔は優しく、その姿は美しい。
そして、僕は『祝の島』を観てあらためて知った。
「想い」は継承することができる。
加瀬修一(プランナー・ライター)
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